紅林さま、拝復、PARCの細川です。
いつもPARCの諸活動をご紹介いただき、有難うございます。
以前このMLにもちょこっと書きましたが、
この映画であつかわれる「世界初の高レベル放射性廃棄物最終処分場」と
日本政府が進めようとしている「高レベル放射性廃棄物最終処分場」とは
全く別ものですので、この点、みなさん是非ご認識ください。
フィンランドのは、使用済みウラン燃料の地下埋設
日本政府が目論んでいるのは、再処理廃液(ガラス固化体)の地下埋設です。
日本政府は、使用済み燃料を「リサイクル資源」と称して「廃棄物ではない」と強弁しています。(国際的には、使用済み燃料こそが「高レベル廃棄物」です。)
「高レベル放射性廃棄物最終処分場の問題は日本でも真剣に考える必要があります。」との紅林さんのご指摘は、もちろんそうではあるのですが、
「どこにどう作るかを真剣に考えましょう」という政府の誘導とは別の考え方をする必要があります。
つまり、再処理廃液を発生させないことがもっとも重要なポイントです。
再処理廃液は、超高レベル放射性廃棄物ともよぶべきもので、使用済み燃料よりもはるかにはるかに処分が厄介です。使用済み燃料の最終処分ですら、フィンランドのように大変な技術開発と難しい議論とすさまじいコストが必要になることは映画で描かれているとおり。
再処理廃液の処分となると、それをはるかに上回る技術的困難とコストと危険性がともないます。
再処理そのものを禁じなければ、何の解決もありません。
以上のように主張すると、必ず出てくる反論は、ではすでにあるガラス固化体(日本政府が「高レベル廃棄物」=特定放射性廃棄物と呼んでいるもの)をどうするのか? また、すでにある使用済みウラン燃料をどうするのか? というものです。
以下は、細川の個人的見解です。
・いま六ヶ所に戻って来ているのは、ガラス固化体の試作品のようなものです。日本政府の計画では、はるかに大量の固化体をこれから作る(つまり再処理をすすめる)ことになっていますし、その際、固化体1本あたりの放射能量も今あるものより高くなります。(フランスの再処理工場ではとりあえず薄めに作った。) 量的に考えることが重要で、ともかくこれ以上増やさないことを、解決の大前提としなければなりません。
(「すでにあるものをどうするのだ?」は、「これ以上つくってはだめ」を否定する根拠にはならない、ということです。)
・ガラス固化体を安全に地下埋設する技術は、今のところ存在しません。無理に埋設工事をすることが破局的な事故につながるリスクのほうが高いと考えます。技術開発研究は進める必要はあるでしょうが、現行計画のように50年後に埋設という見通しはまったく非現実的です。
→ ということは、どうなるかといえば、六ヶ所に「50年期限」でおかせてもらっている固化体は当面、そのまま置いておくこと以外に方策はないでしょう。もちろん、重大な約束違反ですから、六ヶ所村・青森県にはそれなりの賠償を手当しなければなりません。青森県知事は、50年立ったら必ず撤去をと主張していて、もちろんそれは正しい主張ですけれど、技術的・経済的に不可能です。
・使用済みウラン燃料棒は、再処理しなければどうするのか。映画(フィンランド)のような地下埋設は日本の地質構造ではまず無理。水冷から空冷にきりかえて、地上ないし浅い地下でずっと保管する(アメリカ方式)をとらざるをえないでしょう。すでに三菱・日立などは、その方針で技術開発しています。現在の日本の政策(全量再処理方針)と整合させるために「中間処分」と称していますが、これがそのまま地上での最終処分になるだろうと考えられます。
→ その場所は、といえば、むつ市のように新規立地するケースもありますが、基本的には、現在ある原発サイトをそのまま保管サイトに切り替えていくというのが、もっとも安全です。労働者の総被曝量もこの方式が一番少ないはず。
しかし、これまた、立地市町村としては納得のいかない話で、深刻な議論が必要となります。
・厄介なのは、日本がプルサーマル(MOX)という禁じ手に手を出してしまったこと。(現時点ではまだ、ごく一部ですので、ともかく止めることが先決)。 使用済みプルトニウム燃料(MOX燃料)は、使用済みウラン燃料よりも、発熱量・放射線量ともずっと高く、扱いははるかに厄介です。もちろん、再処理もできません。(電力会社や経産省は、あたかもMOX燃料もリサイクルできるかのような図をよく広告に載せますが、MOX再処理工場の見通しはまったく立っていません。) 水冷から空冷にきりかえるまでにかかる年数も長くなってしまうでしょうから、水冷の期間中にメルトダウンをおこす恐れがあります。
→ これも、結局、原発サイトにそのまま置いておく以外に当面、方策はないでしょう。場合によっては、停止した原子炉(圧力容器)のなかにおいたまま、何十年か水冷したのち、石棺化ということも考えなければなりません。経済的には馬鹿げた話ですが、こういったことを真剣に検討せざるをえないのです。
高レベル廃棄物の処分について真剣に考えるというのは、以上のような内容になるのであって、日本政府がにこにこと呼びかけているような「どこに埋めるか考えましょう」というような話ではないということ、ぜひ皆さんご認識ください。
On 2012/02/11, at 0:04, <pkurbys@yahoo.co.jp> さん wrote:
> フィンランドで建設されている世界初の高レベル放射性廃棄物最終処分場を
> 描き、核のゴミ問題を問いかけるドキュメンタリー映画『100,000年後の安全』。
>
> 映画館でご覧になった方もおられるかと思いますが、まだ観ていない方、
> 観逃した方は明日2月12日(日) に東京・青山(表参道)の東京ウィメンズ
> プラザのホールで上映会が開催されますので、ぜひご覧ください。
>
> 映画上映後はゲストトークも予定しています。
>
> 財団法人大竹財団と私も会員になっていますPARC(アジア太平洋資料センター)
> の共催により開催されます。
>
> この高レベル放射性廃棄物最終処分場の問題は日本でも真剣に考える
> 必要があります。
chao!(・_・)ゝ
細川 弘明 拝
http://twitter.com/ngalyak
http://twilog.org/ngalyak
http://parcic-touhoku.blogspot.com
http://www.parcic.org/project/tohoku
高木仁三郎市民科学基金の緊急取り組みにも
どうかご支援を! http://bit.Ly/takagiF
よろしければ、下のマークをクリックして!
![]()
よろしければ、もう一回!
いつもPARCの諸活動をご紹介いただき、有難うございます。
以前このMLにもちょこっと書きましたが、
この映画であつかわれる「世界初の高レベル放射性廃棄物最終処分場」と
日本政府が進めようとしている「高レベル放射性廃棄物最終処分場」とは
全く別ものですので、この点、みなさん是非ご認識ください。
フィンランドのは、使用済みウラン燃料の地下埋設
日本政府が目論んでいるのは、再処理廃液(ガラス固化体)の地下埋設です。
日本政府は、使用済み燃料を「リサイクル資源」と称して「廃棄物ではない」と強弁しています。(国際的には、使用済み燃料こそが「高レベル廃棄物」です。)
「高レベル放射性廃棄物最終処分場の問題は日本でも真剣に考える必要があります。」との紅林さんのご指摘は、もちろんそうではあるのですが、
「どこにどう作るかを真剣に考えましょう」という政府の誘導とは別の考え方をする必要があります。
つまり、再処理廃液を発生させないことがもっとも重要なポイントです。
再処理廃液は、超高レベル放射性廃棄物ともよぶべきもので、使用済み燃料よりもはるかにはるかに処分が厄介です。使用済み燃料の最終処分ですら、フィンランドのように大変な技術開発と難しい議論とすさまじいコストが必要になることは映画で描かれているとおり。
再処理廃液の処分となると、それをはるかに上回る技術的困難とコストと危険性がともないます。
再処理そのものを禁じなければ、何の解決もありません。
以上のように主張すると、必ず出てくる反論は、ではすでにあるガラス固化体(日本政府が「高レベル廃棄物」=特定放射性廃棄物と呼んでいるもの)をどうするのか? また、すでにある使用済みウラン燃料をどうするのか? というものです。
以下は、細川の個人的見解です。
・いま六ヶ所に戻って来ているのは、ガラス固化体の試作品のようなものです。日本政府の計画では、はるかに大量の固化体をこれから作る(つまり再処理をすすめる)ことになっていますし、その際、固化体1本あたりの放射能量も今あるものより高くなります。(フランスの再処理工場ではとりあえず薄めに作った。) 量的に考えることが重要で、ともかくこれ以上増やさないことを、解決の大前提としなければなりません。
(「すでにあるものをどうするのだ?」は、「これ以上つくってはだめ」を否定する根拠にはならない、ということです。)
・ガラス固化体を安全に地下埋設する技術は、今のところ存在しません。無理に埋設工事をすることが破局的な事故につながるリスクのほうが高いと考えます。技術開発研究は進める必要はあるでしょうが、現行計画のように50年後に埋設という見通しはまったく非現実的です。
→ ということは、どうなるかといえば、六ヶ所に「50年期限」でおかせてもらっている固化体は当面、そのまま置いておくこと以外に方策はないでしょう。もちろん、重大な約束違反ですから、六ヶ所村・青森県にはそれなりの賠償を手当しなければなりません。青森県知事は、50年立ったら必ず撤去をと主張していて、もちろんそれは正しい主張ですけれど、技術的・経済的に不可能です。
・使用済みウラン燃料棒は、再処理しなければどうするのか。映画(フィンランド)のような地下埋設は日本の地質構造ではまず無理。水冷から空冷にきりかえて、地上ないし浅い地下でずっと保管する(アメリカ方式)をとらざるをえないでしょう。すでに三菱・日立などは、その方針で技術開発しています。現在の日本の政策(全量再処理方針)と整合させるために「中間処分」と称していますが、これがそのまま地上での最終処分になるだろうと考えられます。
→ その場所は、といえば、むつ市のように新規立地するケースもありますが、基本的には、現在ある原発サイトをそのまま保管サイトに切り替えていくというのが、もっとも安全です。労働者の総被曝量もこの方式が一番少ないはず。
しかし、これまた、立地市町村としては納得のいかない話で、深刻な議論が必要となります。
・厄介なのは、日本がプルサーマル(MOX)という禁じ手に手を出してしまったこと。(現時点ではまだ、ごく一部ですので、ともかく止めることが先決)。 使用済みプルトニウム燃料(MOX燃料)は、使用済みウラン燃料よりも、発熱量・放射線量ともずっと高く、扱いははるかに厄介です。もちろん、再処理もできません。(電力会社や経産省は、あたかもMOX燃料もリサイクルできるかのような図をよく広告に載せますが、MOX再処理工場の見通しはまったく立っていません。) 水冷から空冷にきりかえるまでにかかる年数も長くなってしまうでしょうから、水冷の期間中にメルトダウンをおこす恐れがあります。
→ これも、結局、原発サイトにそのまま置いておく以外に当面、方策はないでしょう。場合によっては、停止した原子炉(圧力容器)のなかにおいたまま、何十年か水冷したのち、石棺化ということも考えなければなりません。経済的には馬鹿げた話ですが、こういったことを真剣に検討せざるをえないのです。
高レベル廃棄物の処分について真剣に考えるというのは、以上のような内容になるのであって、日本政府がにこにこと呼びかけているような「どこに埋めるか考えましょう」というような話ではないということ、ぜひ皆さんご認識ください。
On 2012/02/11, at 0:04, <pkurbys@yahoo.co.jp> さん wrote:
> フィンランドで建設されている世界初の高レベル放射性廃棄物最終処分場を
> 描き、核のゴミ問題を問いかけるドキュメンタリー映画『100,000年後の安全』。
>
> 映画館でご覧になった方もおられるかと思いますが、まだ観ていない方、
> 観逃した方は明日2月12日(日) に東京・青山(表参道)の東京ウィメンズ
> プラザのホールで上映会が開催されますので、ぜひご覧ください。
>
> 映画上映後はゲストトークも予定しています。
>
> 財団法人大竹財団と私も会員になっていますPARC(アジア太平洋資料センター)
> の共催により開催されます。
>
> この高レベル放射性廃棄物最終処分場の問題は日本でも真剣に考える
> 必要があります。
chao!(・_・)ゝ
細川 弘明 拝
http://twitter.com/ngalyak
http://twilog.org/ngalyak
http://parcic-touhoku.blogspot.com
http://www.parcic.org/project/tohoku
高木仁三郎市民科学基金の緊急取り組みにも
どうかご支援を! http://bit.Ly/takagiF
よろしければ、下のマークをクリックして!

よろしければ、もう一回!
