▽EU各国原子力規制当局 事業者などに原発安全評価で改善措置や追加調査を要求
毎日新聞によると、稼働中の原発を持つ加盟14カ国が安全評価の最終報告書をま
とめ、EUの欧州委員会に提出した。ドイツ、オランダ、ハンガリー、ブルガリアの
4カ国の原子力規制当局が電力事業者などに対して安全性を強化するための改善措置
や追加調査を要求している。
福島第1原発事故を受けEUは、他国・地域に先駆けて安全評価を実施したが、限
られた時間で安全性を評価し切れなかった実態が明らかになった。
記事によるとドイツでは、想定外の地震については時間不足で事業者が調査できな
かったことのほか、昨年の原発8基閉鎖の根拠になった「7基が飛行機事故に対して
安全ではない」との調査結果も報告書に併記した。飛行機事故や電源喪失などのケー
スを継続調査する。
オランダでは、事業者が「洪水は極めてまれ」と主張しているがそれを退け、堤防
が決壊する場合を含めた再調査を実施するよう求めた。耐震性の確認も十分でないと
して「安全性に実効性を持たせるには追加調査が必要」と報告書に記載。
ブルガリアは「(災害への)強さと弱点が明確になった」と報告書に記載、弱点克
服のために移動式の電源設備や排水設備の整備を求め、ハンガリーは報告書に「緊急
介入は不要」と記したものの、洪水への耐性が弱く、地震に伴う土壌液状化への対策
も不十分だと指摘した。
上記4カ国のほか、フランスは「極限状態への耐性を向上させる必要がある」と記
述そて、今年6月までに事業者に危機管理対策を再提出させる。電力供給の約8割を
原発に依存する「原発大国」フランスだが、最大野党の社会党は、安全評価の報告書
を受けて、「リスク管理が十分だったという神話、安い電力だという神話が崩れたの
だ」(毎日新聞)と「脱原発依存」路線の正当性を主張している。
フィンランド、スウェーデンは、原発に「欠陥なし」との判断を下したが、高波や
猛吹雪への対策を取るよう求めた。
EUは、国別の最終報告を受け、各国の規制当局者が相互に結果を評価し合う「ピ
ア・レビュー」を実施し、その上で、6月のEU首脳会議に最終報告書を提出する。
原発ストレステスト:EU4カ国で改善要求(毎日新聞8日)
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20120108k0000e030113000c.html
<フランス>原子炉改修に1兆円必要 安全評価報告書(毎日新聞8日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120108-00000011-mai-int
▽原子炉等規制法の見直し案 脱原発への具体的な工程表を
日本では、細野原発事故担当相が、原子炉等規制法の見直し案を明らかにした。
信濃毎日新聞は8日の社説「40年で廃炉 脱原発への一歩とせよ」で、担当相の
姿勢を<脱原発への足掛かりと位置付けたい>しつつも、見直し案は<確かな工程を
示した>ものではなく、<抜け穴も用意されている>と指摘した。
見直し案の骨格は、1)発電用の原子炉に「40年運転制限制」を導入すること
で、2)政治的判断を入れずに、40年を期限に基本的に廃炉にしていく、ことにあ
る。
だが電力会社は、「十分な管理をすれば60年間は可能」とし、経済産業省もそれ
を認めてきた。同社説は、<国内の原発54基のうち、30年を超えたものは19基
ある。「40年定年」が実現し新規建設がないとすれば、原発は確実に減り続け、最
終的にはすべて廃炉になる>として、この40年で廃炉の原子炉等規制法の見直し案
を評価、であれば、<見直し案を土台に、脱原発への具体的な工程表をつくるとき
だ>と提言する。
注意点として、1)政府案には、「原子炉の保全を遂行する技術的能力」などを審
査したうえで延長を認めるという例外規定が設けられている。これでは「40年定
年」が空洞化しかねない。2)見直し案だけでは廃炉までに時間がかかりすぎる点を
挙げる。
社説は、<福島の事故を受け、ドイツのメルケル政権は昨年夏、2022年末まで
に国内すべての原発を閉鎖する法律を成立させている。高まる原発反対の声に迅速に
対応した政策転換である。日本は地震列島だ。いつまた大地震が襲うか分からない。
ドイツ以上に短い期間で、原発に頼らない社会を築くことが望ましい。エネルギー政
策の転換を含め、脱原発に向けた明確な青写真を急ぐ必要がある>締め括っている。
愛媛新聞も8日付社説に<原発「40年規制」 見直しを「廃炉」につなげよう>
を掲げ、以下のように提言している。
1)40年のタガをはめた今回の政府方針は、原発安全規制の在り方の方針転換とも
いえる。運転期間を法律で規定するのも初めてである。原則とはいえ、従来のあい
まいな状況からみれば一歩前進である。
2)野田首相も昨年の就任会見で「寿命がきた原発は廃炉。新設は無理」と明言し
た。安全規制に関する見直しを「脱原発」に結び付けていかなければならない。
3)見直し案は、例外として電力会社などから申請があった場合、条件を満たせば一
定期間の運転延長を認める内容だ。このため、延長を認める場合の判断基準や運用
が課題となってくる。発電事業者と毅然と対峙できる検査機関を構築しなければ、
国民の納得は得られまい。
4)原発に対する国民の視線は厳しくなっている。国の規制見直しも、事故で失った
信頼回復を狙ったものだろう。国は、現行制度との違いを明確にする必要がある。
5)今回の見直しは、停止したままになっている原発の再稼働に向けた条件整備との
指摘もある。だが、新規の原発建設は当面不可能だ。
6)政府の見直しを受けて、電力会社などは、いかに40年を超えて運転するかを模
索していくことが予想されるが、しかし、脱原発の流れは今後も弱まることはないだ
ろう。
7)運転延長に力を注ぐより、原発の廃炉とともに新たなエネルギー源の開発にこそ
取り組むべきである。
40年で廃炉 脱原発への一歩とせよ(信濃毎日新聞8日)
http://www.shinmai.co.jp/news/20120108/KT120107ETI090010000.html
原発「40年規制」 見直しを「廃炉」につなげよう(愛媛新聞8日)
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201201087572.html
▽辺野古移設 環境影響評価(アセスメント) 知事意見作成のための審査へ
米軍普天間基地、辺野古移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の評価書につ
いて。沖縄防衛局は6日、県から指摘された書類の欠落分を提出した。県は同日午
後に書類を確認、飛行場設置事業分を受理した。5日には埋め立て事業分を受理して
いる。
受理手続きはこれでが完了し、ここから知事意見作成のための審査に入る。なお、
沖縄防衛局は6日、評価書の一般公開や、住民からの意見を評価書補正に反映させる
ことを検討していると表明した。
知事意見は、県アセス条例に関わる「飛行場」が2月20日まで。「埋め立て」は
3月28日まで(環境省は同27日までとしている)。必要書類の欠落部分の補正に
かかった1日をめぐる見解の差は、県と同省が確認することになる。
辺野古アセス評価書:県、受理を完了 /沖縄(琉球新報7日
http://mainichi.jp/area/okinawa/news/20120107rky00m010008000c.html
▽米国の新国防戦略 アジアの「同盟国」に「役割の拡大」を求める内容
5日、オバマ米大統領が米国の新たな国防戦略を発表した。大方針は、1)厳しい
財政状況のなか、2)全体的な兵力規模を縮小する、その一方で、3)アジア地域で
米軍のプレゼンスを高めるというもの。
イラクやアフガニスタンでの「テロとの戦い」を掲げ、ブッシュ前大統領が強力に
進めた戦力増強と出兵は、膨大な戦費と伴うもので、米国を疲弊させる大きな要因と
なってきた。オバマ政権はこんどの新戦略によって、米軍の大規模な再編を進めるこ
とになる。
新戦略の背景としては、中国やイランが、南シナ海やホルムズ海峡などの地域で、
米軍の戦力展開を阻止する動きを見せていることを挙げる。サイバー戦争への対策や
無人偵察機の導入を優先的に強化する一方で、陸海軍の兵力規模の縮小や、核兵器の
備蓄や欧州駐留軍の削減も視野に入れる。
パネッタ国防長官は、「より小規模で無駄のない」部隊の展開と説明する。ロイタ
ー通信によると、米当局者は、米軍の兵力数は向こう10年間に10─15%が削減
されるとの見通しを示している。
オバマ米政権のこの新戦略について、信濃毎日新聞が7日付の社説「米の国防戦略
アジアの緊張を高める」で以下の指摘をしている。
1)オバマ政権は経済連携などでアジア太平洋地域を重視する方針を示している。軍
事面でも米国にとって最重要地域であることを表明する内容だ。
2)米国はこの新戦略で、経済的、軍事的に膨張を続ける中国と張り合う姿勢を鮮明
にした。東シナ海、南シナ海で軍事活動を活発化させる中国をけん制するのが目的
で、地上戦力を縮小する一方、海空軍を統合運用する「エアシーバトル構想」を重
視したのも特徴だ。
3)アジア諸国が米中の覇権争いに巻き込まれる恐れが強まってきた。アジアの緊張
がより高まるのは必至だ。米中にはず、アジアの安定を第一に考えた慎重な行動を
求める。
4)新戦略には、財政難を受け国防予算の大幅な減額が迫られる米国の姿と、その一
方 で、軍事的な影響力を失いたくないとの思惑が表れている。
5)米国は中東と朝鮮半島で紛争が起きたときに同時に対処する「二正面作戦」を断
念し、今後、大規模紛争への対応は一つに絞ることになる。
6)「核なき世界」を訴えてノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領だが、核戦力に
関しては、世界に核兵器がある限り維持する考えを示している。プルトニウムを使
った新たなタイプの核実験を行ったことも明らかになった。
7)新戦略は、日本などアジアの「同盟国」に対し、役割の拡大を求めている。財政
的に余裕がない米国の国防戦略の穴埋めを、アジアの同盟国や友好国に担わせよう
としている。
8)日本は、国是としてきた「武器輸出三原則」を抜本的に見直し、事実上の禁輸政
策を大幅に緩和することを決めた。役割分担の名の下に、米国からの圧力がさらに
強まりそうだ。
9)なし崩しに米国の軍事戦略に巻き込まれることがないよう、監視を強めなくては
ならない。
訂正:米大統領が新国防戦略を発表、アジア重視と兵力規模縮小が柱(ロイター6日)
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE80501S20120106
キャンベル米国務次官補:新国防戦略「日米同盟が基礎」(毎日新聞7日)
http://mainichi.jp/select/world/news/20120107ddm002030093000c.html
米の国防戦略 アジアの緊張を高める(信濃毎日新聞7日)
http://www.shinmai.co.jp/news/20120107/KT120106ETI090004000.html
[JCJふらっしゅ]
http://archive.mag2.com/0000102032/index.html
まぐまぐID:0000102032/不定期刊(ほぼ日刊)購読無料/plain_text
・発行所/JCJふらっしゅ編集部 http://archive.mag2.com/0000102032/index.html
編集発行人@junzo_kowashi http://junzo.seesaa.net/
http://jcj-daily.seesaa.net/ http://jcj-daily.sakura.ne.jp/
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毎日新聞によると、稼働中の原発を持つ加盟14カ国が安全評価の最終報告書をま
とめ、EUの欧州委員会に提出した。ドイツ、オランダ、ハンガリー、ブルガリアの
4カ国の原子力規制当局が電力事業者などに対して安全性を強化するための改善措置
や追加調査を要求している。
福島第1原発事故を受けEUは、他国・地域に先駆けて安全評価を実施したが、限
られた時間で安全性を評価し切れなかった実態が明らかになった。
記事によるとドイツでは、想定外の地震については時間不足で事業者が調査できな
かったことのほか、昨年の原発8基閉鎖の根拠になった「7基が飛行機事故に対して
安全ではない」との調査結果も報告書に併記した。飛行機事故や電源喪失などのケー
スを継続調査する。
オランダでは、事業者が「洪水は極めてまれ」と主張しているがそれを退け、堤防
が決壊する場合を含めた再調査を実施するよう求めた。耐震性の確認も十分でないと
して「安全性に実効性を持たせるには追加調査が必要」と報告書に記載。
ブルガリアは「(災害への)強さと弱点が明確になった」と報告書に記載、弱点克
服のために移動式の電源設備や排水設備の整備を求め、ハンガリーは報告書に「緊急
介入は不要」と記したものの、洪水への耐性が弱く、地震に伴う土壌液状化への対策
も不十分だと指摘した。
上記4カ国のほか、フランスは「極限状態への耐性を向上させる必要がある」と記
述そて、今年6月までに事業者に危機管理対策を再提出させる。電力供給の約8割を
原発に依存する「原発大国」フランスだが、最大野党の社会党は、安全評価の報告書
を受けて、「リスク管理が十分だったという神話、安い電力だという神話が崩れたの
だ」(毎日新聞)と「脱原発依存」路線の正当性を主張している。
フィンランド、スウェーデンは、原発に「欠陥なし」との判断を下したが、高波や
猛吹雪への対策を取るよう求めた。
EUは、国別の最終報告を受け、各国の規制当局者が相互に結果を評価し合う「ピ
ア・レビュー」を実施し、その上で、6月のEU首脳会議に最終報告書を提出する。
原発ストレステスト:EU4カ国で改善要求(毎日新聞8日)
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20120108k0000e030113000c.html
<フランス>原子炉改修に1兆円必要 安全評価報告書(毎日新聞8日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120108-00000011-mai-int
▽原子炉等規制法の見直し案 脱原発への具体的な工程表を
日本では、細野原発事故担当相が、原子炉等規制法の見直し案を明らかにした。
信濃毎日新聞は8日の社説「40年で廃炉 脱原発への一歩とせよ」で、担当相の
姿勢を<脱原発への足掛かりと位置付けたい>しつつも、見直し案は<確かな工程を
示した>ものではなく、<抜け穴も用意されている>と指摘した。
見直し案の骨格は、1)発電用の原子炉に「40年運転制限制」を導入すること
で、2)政治的判断を入れずに、40年を期限に基本的に廃炉にしていく、ことにあ
る。
だが電力会社は、「十分な管理をすれば60年間は可能」とし、経済産業省もそれ
を認めてきた。同社説は、<国内の原発54基のうち、30年を超えたものは19基
ある。「40年定年」が実現し新規建設がないとすれば、原発は確実に減り続け、最
終的にはすべて廃炉になる>として、この40年で廃炉の原子炉等規制法の見直し案
を評価、であれば、<見直し案を土台に、脱原発への具体的な工程表をつくるとき
だ>と提言する。
注意点として、1)政府案には、「原子炉の保全を遂行する技術的能力」などを審
査したうえで延長を認めるという例外規定が設けられている。これでは「40年定
年」が空洞化しかねない。2)見直し案だけでは廃炉までに時間がかかりすぎる点を
挙げる。
社説は、<福島の事故を受け、ドイツのメルケル政権は昨年夏、2022年末まで
に国内すべての原発を閉鎖する法律を成立させている。高まる原発反対の声に迅速に
対応した政策転換である。日本は地震列島だ。いつまた大地震が襲うか分からない。
ドイツ以上に短い期間で、原発に頼らない社会を築くことが望ましい。エネルギー政
策の転換を含め、脱原発に向けた明確な青写真を急ぐ必要がある>締め括っている。
愛媛新聞も8日付社説に<原発「40年規制」 見直しを「廃炉」につなげよう>
を掲げ、以下のように提言している。
1)40年のタガをはめた今回の政府方針は、原発安全規制の在り方の方針転換とも
いえる。運転期間を法律で規定するのも初めてである。原則とはいえ、従来のあい
まいな状況からみれば一歩前進である。
2)野田首相も昨年の就任会見で「寿命がきた原発は廃炉。新設は無理」と明言し
た。安全規制に関する見直しを「脱原発」に結び付けていかなければならない。
3)見直し案は、例外として電力会社などから申請があった場合、条件を満たせば一
定期間の運転延長を認める内容だ。このため、延長を認める場合の判断基準や運用
が課題となってくる。発電事業者と毅然と対峙できる検査機関を構築しなければ、
国民の納得は得られまい。
4)原発に対する国民の視線は厳しくなっている。国の規制見直しも、事故で失った
信頼回復を狙ったものだろう。国は、現行制度との違いを明確にする必要がある。
5)今回の見直しは、停止したままになっている原発の再稼働に向けた条件整備との
指摘もある。だが、新規の原発建設は当面不可能だ。
6)政府の見直しを受けて、電力会社などは、いかに40年を超えて運転するかを模
索していくことが予想されるが、しかし、脱原発の流れは今後も弱まることはないだ
ろう。
7)運転延長に力を注ぐより、原発の廃炉とともに新たなエネルギー源の開発にこそ
取り組むべきである。
40年で廃炉 脱原発への一歩とせよ(信濃毎日新聞8日)
http://www.shinmai.co.jp/news/20120108/KT120107ETI090010000.html
原発「40年規制」 見直しを「廃炉」につなげよう(愛媛新聞8日)
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201201087572.html
▽辺野古移設 環境影響評価(アセスメント) 知事意見作成のための審査へ
米軍普天間基地、辺野古移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の評価書につ
いて。沖縄防衛局は6日、県から指摘された書類の欠落分を提出した。県は同日午
後に書類を確認、飛行場設置事業分を受理した。5日には埋め立て事業分を受理して
いる。
受理手続きはこれでが完了し、ここから知事意見作成のための審査に入る。なお、
沖縄防衛局は6日、評価書の一般公開や、住民からの意見を評価書補正に反映させる
ことを検討していると表明した。
知事意見は、県アセス条例に関わる「飛行場」が2月20日まで。「埋め立て」は
3月28日まで(環境省は同27日までとしている)。必要書類の欠落部分の補正に
かかった1日をめぐる見解の差は、県と同省が確認することになる。
辺野古アセス評価書:県、受理を完了 /沖縄(琉球新報7日
http://mainichi.jp/area/okinawa/news/20120107rky00m010008000c.html
▽米国の新国防戦略 アジアの「同盟国」に「役割の拡大」を求める内容
5日、オバマ米大統領が米国の新たな国防戦略を発表した。大方針は、1)厳しい
財政状況のなか、2)全体的な兵力規模を縮小する、その一方で、3)アジア地域で
米軍のプレゼンスを高めるというもの。
イラクやアフガニスタンでの「テロとの戦い」を掲げ、ブッシュ前大統領が強力に
進めた戦力増強と出兵は、膨大な戦費と伴うもので、米国を疲弊させる大きな要因と
なってきた。オバマ政権はこんどの新戦略によって、米軍の大規模な再編を進めるこ
とになる。
新戦略の背景としては、中国やイランが、南シナ海やホルムズ海峡などの地域で、
米軍の戦力展開を阻止する動きを見せていることを挙げる。サイバー戦争への対策や
無人偵察機の導入を優先的に強化する一方で、陸海軍の兵力規模の縮小や、核兵器の
備蓄や欧州駐留軍の削減も視野に入れる。
パネッタ国防長官は、「より小規模で無駄のない」部隊の展開と説明する。ロイタ
ー通信によると、米当局者は、米軍の兵力数は向こう10年間に10─15%が削減
されるとの見通しを示している。
オバマ米政権のこの新戦略について、信濃毎日新聞が7日付の社説「米の国防戦略
アジアの緊張を高める」で以下の指摘をしている。
1)オバマ政権は経済連携などでアジア太平洋地域を重視する方針を示している。軍
事面でも米国にとって最重要地域であることを表明する内容だ。
2)米国はこの新戦略で、経済的、軍事的に膨張を続ける中国と張り合う姿勢を鮮明
にした。東シナ海、南シナ海で軍事活動を活発化させる中国をけん制するのが目的
で、地上戦力を縮小する一方、海空軍を統合運用する「エアシーバトル構想」を重
視したのも特徴だ。
3)アジア諸国が米中の覇権争いに巻き込まれる恐れが強まってきた。アジアの緊張
がより高まるのは必至だ。米中にはず、アジアの安定を第一に考えた慎重な行動を
求める。
4)新戦略には、財政難を受け国防予算の大幅な減額が迫られる米国の姿と、その一
方 で、軍事的な影響力を失いたくないとの思惑が表れている。
5)米国は中東と朝鮮半島で紛争が起きたときに同時に対処する「二正面作戦」を断
念し、今後、大規模紛争への対応は一つに絞ることになる。
6)「核なき世界」を訴えてノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領だが、核戦力に
関しては、世界に核兵器がある限り維持する考えを示している。プルトニウムを使
った新たなタイプの核実験を行ったことも明らかになった。
7)新戦略は、日本などアジアの「同盟国」に対し、役割の拡大を求めている。財政
的に余裕がない米国の国防戦略の穴埋めを、アジアの同盟国や友好国に担わせよう
としている。
8)日本は、国是としてきた「武器輸出三原則」を抜本的に見直し、事実上の禁輸政
策を大幅に緩和することを決めた。役割分担の名の下に、米国からの圧力がさらに
強まりそうだ。
9)なし崩しに米国の軍事戦略に巻き込まれることがないよう、監視を強めなくては
ならない。
訂正:米大統領が新国防戦略を発表、アジア重視と兵力規模縮小が柱(ロイター6日)
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE80501S20120106
キャンベル米国務次官補:新国防戦略「日米同盟が基礎」(毎日新聞7日)
http://mainichi.jp/select/world/news/20120107ddm002030093000c.html
米の国防戦略 アジアの緊張を高める(信濃毎日新聞7日)
http://www.shinmai.co.jp/news/20120107/KT120106ETI090004000.html
[JCJふらっしゅ]
http://archive.mag2.com/0000102032/index.html
まぐまぐID:0000102032/不定期刊(ほぼ日刊)購読無料/plain_text
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