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8月メール通信「日米安保を日米平和友好条約へ」(1)/池住義憲さんから

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<2012年8月メール通信1>

  日米安保条約を「日米平和友好条約」へ
    〜〜沖縄“本土復帰”40年にあたって
         <その1>

 *本稿は、去る2012年8月12日、日本基督教団紅葉坂教会
  (横浜市西区)で開催された日本基督教団神奈川教区社会
  委員会主催の平和集会で行なった講演内容を基に、要点
  のみを簡略に書きまとめたものです。複数回に分けて送信
  します。文中に記してある配布資料希望の方は、郵送先を
  メール連絡ください。お送りします。→ikezumiあっとmtb.biglobe.ne.jp 

               2012年8月16日
                    池住義憲

■米国の軍事戦略と日米安保

 日本の他に、世界には194カ国ある。その内、日本は一カ国とだけ、軍事同盟関係を結んでいる。その相手国は、米国。日米安全保障条約という名の条約だ。1960年1月19日調印、同年6月23日に批准した条約。すでに半世紀を超えて、他国(米国)との軍事同盟関係が続いている。

 なぜ米国は、日米安保を、日米軍事同盟関係を、重要視しているのか。日米安保をどういう戦略で、どのように位置づけているのか。これを理解するには、地図を改めて見てみるとわかる。

 地図と言っても、平面の世界地図ではない。地球儀を真上から見た地図だ。北極圏を地図の中央に置き、その下に北米大陸。北極圏をはさんで米国にとって地球の向こう側(裏側)は、アフリカ、バルカン半島から中東地域が広がっている。

 ペルシャ湾とカスピ海周辺の中東は、石油資源豊富の地域だ。米国にとっては死活的に重要な地域。しかしこの地域はイスラム諸国が多く、反米色のつよい国が多い。中東を通って南アジア、東南アジア、そして朝鮮半島へと続く。

 これは、ブッシュ米大統領が「不安定な弧」(Arc of Instability、2001年)と呼んだ地帯だ。紛争多発地帯で、テロリストの温床とした地帯だ。翌2002年、同大統領が「悪の枢軸」(Axis of Evil)と名指し批判したイラ
ク、イラン、朝鮮民主主義人民共和国いずれも、この「弧」の中に位置している。

 問題は、米国はこうした“紛争多発地帯”“テロリストの温床地帯”をどうコントロールするか、だ。米国にとって遠い地帯であるため、米軍が戦略を展開する際の「拠点」「パートナー」が必要となる。幸いなことに、右上(西側)には英国が、そして左上(東側)には日本がある。

 米国は英国と二国間軍事同盟を締結はしていない。しかし、NATO(北大西洋条約機構)という軍事同盟組織がある。英国は、米国にとっての強力なパートナーだ。では右側(東側)はどうか。日本がある。日本とは二国間軍事同盟(安保条約)がある。

 このように、英国と日本は、米国にとって軍事戦略上の最重要拠点となっている。安保条約は、こうした米国の世界軍事戦略のなかで位置づけられている。
  → 資料?『米国から見た日英両国の位置』
    (週間金曜日610号 2006.6.16)

■憲法と相容れない軍事同盟関係

 軍事同盟関係は、国内最高法規の憲法と相容れない。どんな国際紛争があっても、それを解決する手段として、「国権の発動たる戦争」「武力による威嚇」「武力の行使」いずれも永久に放棄した日本。

 にもかかわらず、安保条約第5条は、米国または日本いずれか一方に対する武力攻撃があった場合、日米共通の危険に対処するため、共同の軍事行動をとることを相互に宣言している。米軍と自衛隊による共同防衛を義務付けている。
  → 資料?『日米安保条約』全文

 常態化した日米共同軍事演習(最近ではグアム、マリアナ諸島)、またテニアン島にある米軍基地での自衛隊駐留などは、この条項に依拠している。

 安保条約第3条は、「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる」とある。日本は、自衛隊は戦力ではなく“実力”であるとのレトリックを擁して、自衛隊の“能力”向上に邁進してきた。1995年以降、防衛費が4兆7千億円を下回ったことは、一度もない。

■沖縄“本土復帰”がもたらしたもの

 日本には、現在、米軍専用施設が84。面積にして310平方キロある。その内33施設、面積比で言えば73.9%が沖縄に集中。この根拠となっているのが日米安保第6条。この条項のなかで日本は、米国の陸・海・空軍ならびに海兵隊の4軍が「日本国において施設及び区域を使用すること」を許している。屈辱的な主権侵害条項だと私は思う。

 1972年5月、沖縄は“本土”に“復帰”した。当初、沖縄の人たちは、日本国憲法の「平和主義(戦争放棄・軍隊不保持・交戦権否認)」、「主権在民」、「基本的人権」を得ることができる、として沖縄の“本土復帰”を歓迎した。

 しかし、“本土復帰”が沖縄にもたらしたものは、何だったか。それは、日米安保条約の適用だった。広大な米軍基地は、日米安保のもとに位置づけされた。基地は、普天間基地に代表されるように、利用価値の高い平坦で交通の便の良い場所に集中している。

 日本政府は、沖縄を日米軍事同盟の重要・主要拠点とし、沖縄を日米軍事同盟強化に利用した。沖縄は、米国が行う戦争(朝鮮戦争に続くヴェトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争など)の最大かつ重要軍事出撃拠点となり続けている。日本政府は、“沖縄返還”という名のもとに、沖縄に対し、米国が行なう戦争の加害責任を押しつけた。
  → 資料?『アジア・中東への出撃を繰り返す在日米軍』
         (朝日新聞 2006.6.29)

 沖縄の本土“復帰”がもたらしたもうひとつは、継続存在する基地による米軍が起こした事件・事故被害と、米軍構成員による犯罪被害だ。1972年から2010年までの38年間、沖縄で検挙された米軍構成員による犯罪件数は、凶悪犯564件を含み、5,705件にのぼる。米軍構成員が原因で起した交通事故は、年間6,000件を超えている。
  → 資料?『居すわる米軍基地』
    (週刊金曜日894号 2012.5.11)

(つづく)

<次号「メール通信」内容>
■日本の安全保障政策の拡大と日米同盟関係の変化
■日米安保条約を「日米平和友好条約」へ変えるために…(6つの提案)


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