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NHK会長、注意どまり 経営委に任命責任 見識を疑う声も/毎日新聞クローズアップ2014

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140129ddm003020119000c.html
公共放送のトップとしての見識が問われている籾井勝人(もみいかつと)NHK会長について、28日開かれたNHK経営委員会は進退問題に踏み込まず、注意するだけにとどめた。安倍晋三首相に近い人物の目立つ経営委だけに、事態の沈静化を図った形だ。しかし、経営委には籾井氏を選んだ任命責任があり、国会審議でけじめを求める声がくすぶり続けそうだ。【土屋渓、有田浩子】

 「視聴者に対して今回の事態について任命責任がある経営委員会の長としては、はなはだ遺憾だと思っている」。経営委員会終了後の記者説明で浜田健一郎委員長(ANA総合研究所会長)は淡々と説明した。籾井会長がもう一度公の場で議論のある問題について同じ失態を繰り返したらどうなるか問われると、一瞬間を置いてから「仮定の話ですから」と述べ、直接の回答を避けた。

 記者説明には浜田委員長と、委員長代行の上村達男委員(早大教授)らが出席。籾井会長を「厳重注意」にとどめ、進退問題を議論しなかった理由について、上村委員は「改善の余地がある。努力を見守るべきだ」と述べた。

 会長選任にあたっては昨年11月、安倍首相の応援団を自任する作家や哲学者ら4人を経営委員とする人事が国会で承認され、松本正之前会長が突然、退任を表明。安倍首相と直接面識はないものの、政権の考えに近い籾井氏が選ばれた経緯がある。28日の衆院本会議で、首相は籾井氏の発言について「新会長をはじめNHK職員の皆さんは、いかなる政治的な圧力にも屈することなく、中立、公平な放送を続けてほしい」と答弁した。野党などの批判を逆手に取って籾井氏を擁護する狙いとみられる。

 NHKは国家の意向を宣伝する国営放送ではなく、視聴者の受信料で成り立つ公共放送だ。そのトップに立つ会長には編集権を行使する権限があるため、人事次第では時の政権と似通った考え方や意向が番組に反映される可能性がある。

 25日の就任会見で籾井会長は「個人的見解を番組に反映させることはない」と述べたが、現場と食い違いがあった場合には「私個人が指揮するかどうかは別にして、組織の中できちっとしなければならない」「ボルトとナットを締め直す」とも述べている。

 就任前の昨年12月20日、籾井会長は経営委の会合で所信表明を行った。退席後、委員全員から会長の資格要件を満たしているとの評価と共に、「発言が誤解を招く可能性もある。失言があった場合は苦言を呈することも必要」などと心配の声が上がるほど、危うさの残る所信表明だったとみられる。毎日新聞の取材に対し、女性経営委員の一人は「見識がなさ過ぎる。選んだこと自体、嫌になる」とあきれ顔で話した。

 かつて放送行政に強い影響力を持っていた野中広務元官房長官は「NHK会長があんなことを言うのは非常識。NHKのためにも、彼がこのまま会長にいることは国家の不幸だ。第一義的には、経営委員会でけじめをつけるべきだ」と語った。

 ◇政治に迎合する懸念

就任記者会見での籾井会長の発言が物議をかもしたのは、政治権力に迎合し、報道機関としての役割を放棄したと受け止められたからだ。

 国際的にもさまざまな議論がある従軍慰安婦問題について「戦時中はどこにでもあった」という籾井会長の発言を、経営委員の一人は「橋下徹大阪市長と同じ」と指摘する。ただし、こうした物言いについて各国に刺激を与えることを、籾井会長がどこまで覚悟した上で発言していたかは不明だ。

 また「日韓条約で解決済み」との籾井会長の発言は、日本政府の立場であり、韓国外務省はこうした籾井会長の発言を「妄言」と断じ、安倍政権との関連性を含めて批判している。

 国際放送では、重要な問題について国の見解を伝えることが役割の一つとして番組基準に明記されている。領土問題について籾井会長が「政府が右と言っているものを左と言うわけにはいかない」と発言したことについて、上村委員は「日本の立場を伝え、他国のことも伝える。『政府から言われたから』ではまずい」と籾井会長の言葉足らずを指摘する。

 領土問題をめぐっては自民党の「領土に関する特命委員会」が昨年12月、国際世論形成のため「NHKの国際放送やラジオ、通信社を通じた情報発信の強化」を対策の一つに挙げた。これに首相が「国際放送にもう少し皆が興味を持ってくれたらいい」と応じ、政府・与党のNHKの国際放送への期待は大きい。それだけに籾井会長の発言は「政権の意をくんでいる」と波紋を広げた。あるNHKの男性幹部は「政府の言い分だけが国益ではない。報道機関としてバランスが必要」と指摘する。浜田委員長は「日本経済の発展や外国人観光客を呼び込めるような番組作りが必要」との考えだ。

 特定秘密保護法について籾井会長は、法案が通ったことにより、「とりあえず、様子をみるしかない」と述べ、これ以上、掘り下げる必要はないとも受け取れる発言をした。しかし、法律の具体的な運用方法が決まるのはこれからで、引き続きメディアの監視が必要な状況にある。

 民主主義に対する個々人の考え方はさまざまで、籾井会長が言うような一律の「イメージ」は存在しえない。公共放送には政府見解と正反対の事実についても取材を重ね、伝える義務があり、それには政治との距離が問われる。

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 ◇籾井勝人氏(70)略歴

 福岡県嘉麻(かま)市出身、炭鉱を経営する家庭で育った。九州大経済学部を卒業後、三井物産に入社。鉄鋼畑を歩み、取締役副社長などを歴任。2005年日本ユニシス社長に就任、相談役を経て13年6月特別顧問。

 会長就任前、「商社時代は上司も論破した」と歯に衣(きぬ)着せぬ物言いを自ら強調。昨年12月20日の会長選出直後の記者会見で「語彙(ごい)が不足している。多少、野蛮なところがある」。外部から登用された身として「役割は決断と実行」と決意を述べ、趣味のゴルフについては「不安定、無鉄砲」とプレースタイルを自己分析した。

 経営委員は「剛腕」「豪放磊落(ごうほうらいらく)」と評する。

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