<2013年11月メール通信>
『安倍政権の”懐憲”ステップ』
2013年11月16日
池住義憲
(末尾に今後の集会案内あり)
凄まじい勢いで懐憲が進んでいる。安倍政権が画策している憲法“改正”は、三つのステップから成っている。私はこれを安倍政権が目論む「三つの壊憲ステップ」、と呼んでいる。
*詳細は、『福音と世界』12月号(新教出版社、600円)
特集記事「キリスト教平和主義と現実政治」における
巻頭論文「キリスト教平和主義と憲法9条」(池住義憲)
をお読み下さい。
■懐憲ステップ1「解釈懐憲」
第一は、「解釈改憲」。従来の憲法の解釈を変えて集団的自衛権行使を可能にし、9条を実質的に蔑ろにする動き。首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は、海外での武力行使に道を開く集団的自衛権の適用範囲拡大に関する提言を本年12月中下旬にまとめて首相に報告する予定だ。多国籍軍への参加、PKOでの“駆けつけ警護”、他国への後方支援、任務達成のための武器使用緩和などが盛られている。
本年10月上旬には、「日米2プラス2会議」(日米両政府の外務・軍事両担当閣僚による安全保障協議委員会)が開催された。米軍と自衛隊の今後の協力のあり方や役割分担を定めた日米軍事協力の指針(新日米ガイドライン)を再改定する作業を開始した。2014年末までに作業を完了することで合意している。
これら二つの動きを踏まえ、いや先取りして、12月末に新防衛大綱を策定する。新防衛大綱には、F15戦闘機の増強/活用など含んだ敵基地攻撃能力の保持、水陸両用団の新設などの海兵隊機能の保持、武器輸出三原則の事実上の撤廃などが盛り込まれる。
本年10月下旬に政府の有識者会議「安全保障と防衛力に関する懇談会」は、国会安全保障戦略(NSS)原案をまとめた。「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を基本理念として掲げ、武器輸出三原則見直しを打ち出した。これも、年末に閣議決定される新防衛大綱に反映される。
■懐憲ステップ2「立法懐憲」
第二は、「立法改憲」。立法によって9条を蔑ろにし、実質的に改憲状態をつくろうとする動きだ。「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」案と「特定秘密保護法」案の二つをスピード審理し、一体として成立させようとしている。
日本版NSC設置法案は、11月6日、自民・公明・民主・維新・みんなの党の賛成多数により衆院本会議で可決されてしまった。現在、参院で審議が進んでいる。「特定秘密保護法」案は、11月7日から審議入りした。実質審議が翌8日から衆院特別委で始まり、来週中(11月22日まで)に衆院可決し、今臨時国会(12月6日閉会予定)での成立を目指している。
さらに年明けの通常国会では、「国家安全保障基本法」案の提出する予定だ。これは、昨年(2012年)7月に自民党が作成した草案。この法案は、危険極まりない。大変重要なので、ここで法案の一部だけだが記しておきたい。
8条1項に「外部からの軍事的手段による直接または間接の侵害その他の脅威に対し我が国を防衛するため、陸上・海上・航空自衛隊を保有する」と書かれてある。自衛隊は外部からの直接侵害だけでなく、「間接の侵害」さらには「その他の脅威」を加え、その時の政府の解釈と判断で自衛隊の出動範囲を拡大しようとしている点だ。
そして10条で自衛権を行使する場合の6つ事態を定め、その第1に「我が国、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する、外部からの武力攻撃が発生した事態」を挙げている。「我が国と密接な関係にある他国」とは日米安保という二国間軍事同盟を締結している相手国アメリカのこと。集団的自衛権の行使を可能にし、米国の軍事同盟国として海外・国外で米国の戦争を一緒に行なう道を拓くことに繋がる。
*「国家安全保障基本法」案の狙い・背景・問題点については、
雑誌『世界』12月号(岩波書店、840円)の特集「暴走する安全
保障政策」の巻頭論文「国家安全保障基本法は何を狙うか」
(川口創弁護士)を是非お読み下さい。
■もはや明文改憲しなくても・・・
「解釈懐憲」と平行して進められている「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」、「特定秘密保護法」に加えて、「国家安全保障基本法」が成立してしまえば、もはや明文改憲しなくても憲法9条が死文化する。集団的自衛権行使が可能となり、自衛隊が海外で無限邸に武力行使を行なう道が開かれてしまう。
雑誌『世界』の論文のなかで川口弁護士は、「憲法改正手続きを経ることなく、下位の法律で最高法規の憲法を否定しまう」と指摘している。こうした一連の動き、とくに「国家安全保障基本法」の動きは憲法破壊の法案となる。
■憲法9条とベートーベンの第9交響曲
日本友和会(JFOR)80周年記念国際シンポジウム記録冊子『9条の風になろう!』のなかに、日本国憲法が産み出された背景が歴史的に書かれている項がある。9条が人類史のなかでどのように受け継がれ、純化され、結晶されて「第9条」に到達したかが、ベートーベンの第9交響曲「合唱」になぞらえて簡潔に記されている。
第9交響曲は、第一楽章でテーマを出し、第二楽章と第三楽章と音色を純化しながら合唱に至る。そして「友よ、この音色ではない。もっと新しい、希望の音色だ!」と宣言して、「歓喜」のメロディーが歌い上げられる。
憲法9条も、これまでの先人たちによる歴史的経緯を踏まえ、さらに希望の音色へと発展、純化、拡散させよう、というメッセージだ。安倍政権が目論んでいる9条を蔑ろにする「懐憲」の動きに対して、抗う(プロテストする)生き方が今ほど求められている時はない。
以上
-------------------------------------
【集会案内】
●第20回地域と世界がつながるフォーラム
日時: 11月23日(土)13:30〜18:00
場所: 市民交流センターひがしよどがわ(JR新大阪駅東口4分)
内容: 1)TPPでどうなる私たちのお仕事
2)分科会
a. TPPと農業
b. 釜ヶ崎の成り立ち〜現在
c. 日本と世界の成り立ち〜現在
d. 足尾銅山から福島を考える
*分科会(d)は池住が担当します。当日資料
『足尾銅山から福島へ〜〜繰り返される"人災”』
を作成・配布予定です。
(ご希望の方は →ikezumi@mtb.biglobe.ne.jp)
●「とめよう懐憲・護憲結集」をめざす神戸・円卓会議
〜〜愛知・長野・兵庫での経験から「明日」をさぐる
日時: 11月24日(日)13:30〜16:30
場所: 兵庫勤労市民センター(JR兵庫駅北3分)
*パネルディスカッションで池住が愛知での取り組み
(政治を考える市民の会・愛知)を報告・発題します。
こちらの方も当日資料を作成します。ご希望の方は
メール連絡ください。→ikezumi@mtb.biglobe.ne.jp
●「集団的自衛権の行使に反対し、いのちと憲法9条を
守ろう」宗教者共同アピール
日時: 11月26日(火)14:00〜15:30
場所: 衆議院第2議員会館第一会議室
*呼びかけ人の一人として私も出席します。
●第2回政党・政治団体と市民の討論会
日時: 12月1日(日)13:30〜16:15
場所: 東別院会館(名古屋市営地下鉄名城線東別院西5分)
*集会チラシを添付ファイルでお送りします。
加可能な方、是非おいで下さい。
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●2013年度第6回開発教育セミナー
『気づきと対話のファシリテーション
〜〜アジアの共存と平和〜〜』
日時: 12月14日(土)16:00〜15日(日)12:00
場所: 関西セミナーハウス(京都市左京区一乗竹ノ内町)
http://www.academy-kansai.org
講師: 池住義憲
内容: 1)歴史を紐解き、地図から読み解く領土問題
2)問題解決への取り組みに向けて
〜情報・アイディア共有と話し合い
3)アジアの平和と共存
参加費: 10,500円(1泊2食込み)
参加申込: 関西セミナーハウス
(電話075-711-2117)
(メール: office@academy-kansai.org)
よろしければ、下のマークをクリックして!
![]()
よろしければ、もう一回!
『安倍政権の”懐憲”ステップ』
2013年11月16日
池住義憲
(末尾に今後の集会案内あり)
凄まじい勢いで懐憲が進んでいる。安倍政権が画策している憲法“改正”は、三つのステップから成っている。私はこれを安倍政権が目論む「三つの壊憲ステップ」、と呼んでいる。
*詳細は、『福音と世界』12月号(新教出版社、600円)
特集記事「キリスト教平和主義と現実政治」における
巻頭論文「キリスト教平和主義と憲法9条」(池住義憲)
をお読み下さい。
■懐憲ステップ1「解釈懐憲」
第一は、「解釈改憲」。従来の憲法の解釈を変えて集団的自衛権行使を可能にし、9条を実質的に蔑ろにする動き。首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は、海外での武力行使に道を開く集団的自衛権の適用範囲拡大に関する提言を本年12月中下旬にまとめて首相に報告する予定だ。多国籍軍への参加、PKOでの“駆けつけ警護”、他国への後方支援、任務達成のための武器使用緩和などが盛られている。
本年10月上旬には、「日米2プラス2会議」(日米両政府の外務・軍事両担当閣僚による安全保障協議委員会)が開催された。米軍と自衛隊の今後の協力のあり方や役割分担を定めた日米軍事協力の指針(新日米ガイドライン)を再改定する作業を開始した。2014年末までに作業を完了することで合意している。
これら二つの動きを踏まえ、いや先取りして、12月末に新防衛大綱を策定する。新防衛大綱には、F15戦闘機の増強/活用など含んだ敵基地攻撃能力の保持、水陸両用団の新設などの海兵隊機能の保持、武器輸出三原則の事実上の撤廃などが盛り込まれる。
本年10月下旬に政府の有識者会議「安全保障と防衛力に関する懇談会」は、国会安全保障戦略(NSS)原案をまとめた。「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を基本理念として掲げ、武器輸出三原則見直しを打ち出した。これも、年末に閣議決定される新防衛大綱に反映される。
■懐憲ステップ2「立法懐憲」
第二は、「立法改憲」。立法によって9条を蔑ろにし、実質的に改憲状態をつくろうとする動きだ。「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」案と「特定秘密保護法」案の二つをスピード審理し、一体として成立させようとしている。
日本版NSC設置法案は、11月6日、自民・公明・民主・維新・みんなの党の賛成多数により衆院本会議で可決されてしまった。現在、参院で審議が進んでいる。「特定秘密保護法」案は、11月7日から審議入りした。実質審議が翌8日から衆院特別委で始まり、来週中(11月22日まで)に衆院可決し、今臨時国会(12月6日閉会予定)での成立を目指している。
さらに年明けの通常国会では、「国家安全保障基本法」案の提出する予定だ。これは、昨年(2012年)7月に自民党が作成した草案。この法案は、危険極まりない。大変重要なので、ここで法案の一部だけだが記しておきたい。
8条1項に「外部からの軍事的手段による直接または間接の侵害その他の脅威に対し我が国を防衛するため、陸上・海上・航空自衛隊を保有する」と書かれてある。自衛隊は外部からの直接侵害だけでなく、「間接の侵害」さらには「その他の脅威」を加え、その時の政府の解釈と判断で自衛隊の出動範囲を拡大しようとしている点だ。
そして10条で自衛権を行使する場合の6つ事態を定め、その第1に「我が国、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する、外部からの武力攻撃が発生した事態」を挙げている。「我が国と密接な関係にある他国」とは日米安保という二国間軍事同盟を締結している相手国アメリカのこと。集団的自衛権の行使を可能にし、米国の軍事同盟国として海外・国外で米国の戦争を一緒に行なう道を拓くことに繋がる。
*「国家安全保障基本法」案の狙い・背景・問題点については、
雑誌『世界』12月号(岩波書店、840円)の特集「暴走する安全
保障政策」の巻頭論文「国家安全保障基本法は何を狙うか」
(川口創弁護士)を是非お読み下さい。
■もはや明文改憲しなくても・・・
「解釈懐憲」と平行して進められている「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」、「特定秘密保護法」に加えて、「国家安全保障基本法」が成立してしまえば、もはや明文改憲しなくても憲法9条が死文化する。集団的自衛権行使が可能となり、自衛隊が海外で無限邸に武力行使を行なう道が開かれてしまう。
雑誌『世界』の論文のなかで川口弁護士は、「憲法改正手続きを経ることなく、下位の法律で最高法規の憲法を否定しまう」と指摘している。こうした一連の動き、とくに「国家安全保障基本法」の動きは憲法破壊の法案となる。
■憲法9条とベートーベンの第9交響曲
日本友和会(JFOR)80周年記念国際シンポジウム記録冊子『9条の風になろう!』のなかに、日本国憲法が産み出された背景が歴史的に書かれている項がある。9条が人類史のなかでどのように受け継がれ、純化され、結晶されて「第9条」に到達したかが、ベートーベンの第9交響曲「合唱」になぞらえて簡潔に記されている。
第9交響曲は、第一楽章でテーマを出し、第二楽章と第三楽章と音色を純化しながら合唱に至る。そして「友よ、この音色ではない。もっと新しい、希望の音色だ!」と宣言して、「歓喜」のメロディーが歌い上げられる。
憲法9条も、これまでの先人たちによる歴史的経緯を踏まえ、さらに希望の音色へと発展、純化、拡散させよう、というメッセージだ。安倍政権が目論んでいる9条を蔑ろにする「懐憲」の動きに対して、抗う(プロテストする)生き方が今ほど求められている時はない。
以上
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【集会案内】
●第20回地域と世界がつながるフォーラム
日時: 11月23日(土)13:30〜18:00
場所: 市民交流センターひがしよどがわ(JR新大阪駅東口4分)
内容: 1)TPPでどうなる私たちのお仕事
2)分科会
a. TPPと農業
b. 釜ヶ崎の成り立ち〜現在
c. 日本と世界の成り立ち〜現在
d. 足尾銅山から福島を考える
*分科会(d)は池住が担当します。当日資料
『足尾銅山から福島へ〜〜繰り返される"人災”』
を作成・配布予定です。
(ご希望の方は →ikezumi@mtb.biglobe.ne.jp)
●「とめよう懐憲・護憲結集」をめざす神戸・円卓会議
〜〜愛知・長野・兵庫での経験から「明日」をさぐる
日時: 11月24日(日)13:30〜16:30
場所: 兵庫勤労市民センター(JR兵庫駅北3分)
*パネルディスカッションで池住が愛知での取り組み
(政治を考える市民の会・愛知)を報告・発題します。
こちらの方も当日資料を作成します。ご希望の方は
メール連絡ください。→ikezumi@mtb.biglobe.ne.jp
●「集団的自衛権の行使に反対し、いのちと憲法9条を
守ろう」宗教者共同アピール
日時: 11月26日(火)14:00〜15:30
場所: 衆議院第2議員会館第一会議室
*呼びかけ人の一人として私も出席します。
●第2回政党・政治団体と市民の討論会
日時: 12月1日(日)13:30〜16:15
場所: 東別院会館(名古屋市営地下鉄名城線東別院西5分)
*集会チラシを添付ファイルでお送りします。
加可能な方、是非おいで下さい。

●2013年度第6回開発教育セミナー
『気づきと対話のファシリテーション
〜〜アジアの共存と平和〜〜』
日時: 12月14日(土)16:00〜15日(日)12:00
場所: 関西セミナーハウス(京都市左京区一乗竹ノ内町)
http://www.academy-kansai.org
講師: 池住義憲
内容: 1)歴史を紐解き、地図から読み解く領土問題
2)問題解決への取り組みに向けて
〜情報・アイディア共有と話し合い
3)アジアの平和と共存
参加費: 10,500円(1泊2食込み)
参加申込: 関西セミナーハウス
(電話075-711-2117)
(メール: office@academy-kansai.org)
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