バングラデシュの労働者がファッション産業の犠牲に
4月24日(水)午前8時半すぎ、ダッカ近郊、サバールの商業ビル、ラナプラザ(8階建て)が倒壊し、ビル内で操業していた5つの衣料工場の労働者約3000人が生き埋めになりました。警察、消防、軍やボランティアの人たちの救出活動によって約2千300人が救出されましたが、瓦礫の中から次々と遺体が発見され、犠牲者の数は5月12日現在で1125人となっています。
バングラデシュの衣料工場では、火災などの労働災害が繰り返し発生し、そのたびに多数の犠牲者が出ています。その大部分は若い女性です。昨年11月24日にも、ダッカ郊外、アシュリアのタズリーン・ファッション社の工場ビルで火災が発生し、110人の労働者が犠牲になっています。
クリーン・クローズ・キャンペーンは、このような悲劇が繰り返されないように、「衣料ブランドにバングラデシュの工場の防火・安全に関する協定に署名するよう求めるオンライン署名」を呼びかけています。すでに全世界から100万人が署名しています。
http://www.cleanclothes.org/
から署名することができます。
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以下は「労働情報」誌6月1日号掲載予定のレポートの一部です。
昨年、おおさか社会フォーラムに参加するために来日されたナズマ・アクテルさんのコメントも紹介しています。
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・・・ モヒウディン・カーン・アラムギル内務相は、「ビルの倒壊は建築に欠陥があったことが原因である」と述べている。
ラナプラザは商業ビルとして設計・認可されており、銀行や店舗が入居しているが、違法に建て増しされ、しかもファントム・アパレル、ニューウェーブスタイル等の衣料工場が上階に入居し、設計では想定されていない重い機械が設置され、合計で約5000人の労働者が雇用され、交替制で24時間操業していた。
倒壊事故の前日にこのビルの外壁にいくつかの大きな亀裂が発見されたため、警察は検査が完了するまでビルの使用を中止するよう勧告し、銀行と店舗はこの日、休業した。この問題はテレビでも報道され、24日朝、出勤してきた衣料工場の労働者たちは工場に入ることを躊躇した。5階の工場で働いていたアブドル・ラヒミさんによると、「管理者が出てきて、ビルには何も問題はないと言ったので、われわれは中に入った。仕事を始めて1時間ほどした時、突然ビルが崩れ落ちた。意識が戻った時には工場の外に運び出されていた」(「ナショナルポスト」紙4月24日)。
衣料産業の女性労働者を組織しているソミリト・ガーメント・スラミク連合(SGSF)のナズマ・アクテルさんによると、「労働者たちは前日、ビルの外壁に大きな亀裂が見つかったため、家に帰された。ところが翌朝、経営者は労働者たちに、出勤して仕事をするよう命令した。労働者たちは1時間ほど抵抗したが、経営者が工場に入らないと給料を払わないと脅した。そのため労働者は工場に入って仕事を始めた。その1時間後にビルが倒壊した」(英国「ミリタント」紙5月13日号掲載のインタビュー)。
ナズマさんはまた、次のように指摘している。「工場のオーナーの怠慢のために衣料産業が破滅し、何千人もの女性労働者が仕事を失うかもしれない。、昨年11月のタズリーン工場の火災(本誌12年12月15日号を参照)の責任者が処罰されていたら、サバールの悲劇は起こらなかっただろう。ラナプラザの崩壊によって多数の犠牲者が出たのは単なる事故ではない。ビルと工場の所有者の怠慢であり、彼らがこの犠牲に責任を負っている」(「ファイナンシャル・エクスプレス」紙4月26日付)
現在までにラナプラザのオーナーのモハメド・ソヘル・ラナや工場のオーナーをはじめ十数人の責任者が逮捕されている。ラナは事故直後に姿をくらまし、事故現場では懸命の救出作業が続いている中、インドへの逃亡をはかり、4月28日に国境近くで逮捕された。ラナは与党アワミ連盟の青年部のリーダーであるが、野党の国民党ともコネを持っている。
国内および国外からの批判の高まりに対応して、政府は5月9日に、安全基準を満たしていない18の衣料工場の閉鎖を命じた。同12日には衣料労働者の最低賃金の引き上げのための審議会が設立された。また、ILOの使節団との会談にふまえて、労働法の改定(結社の自由や団体交渉権など)、監査官の増員、負傷した労働者の再雇用等を約束した。同13日に政府は、06年の労働法を改定し、衣料産業の労働者が雇用主の承認がなくても労働組合を設立できるようにすると発表した。
各国の労働組合や市民団体は、バングラデシュの衣料工場の安全と労働者の権利の尊重を要求し、政府や経営団体への申し入れ、オンライン署名、負傷者や犠牲者の家族の救援のためのカンパ等の行動を開始している。同時に、バングラデシュの工場から製品を輸入している衣料ブランドや小売チェーンに対する行動も強化している。
ラナプラザで操業していた衣料工場は、英国、デンマーク、フランス、ドイツ、スペイン、アイルランド、カナダ、米国等の衣料ブランドや小売チェーンに製品を納入していた。英国のプリマーク、マタラン、アイルランドのペニーズ(プリマークの子会社)、カナダのジョーフレッシュ等がこれらの工場との取引を確認している。
インダストリオール(製造業の労働組合の国際産別組織)やクリーン・クローズ・キャンペーン(衣料産業の労働者に対する搾取と人権侵害に反対する市民団体)は、多国籍企業にたいしてバングラデシュの衣料工場の防火・安全のための拘束力のある協定に署名するよう求めてきた。これまでにこの協定に署名していたPVH(カルバンクライン、トミーフィルフィガーなどのブランドを保有している)、チボー(ドイツの小売チェーン)のほかに、スウェーデンのH&Mと英国のプリマークがこの協定を受け入れ、工場の安全のための費用を負担することに同意した。
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4月24日(水)午前8時半すぎ、ダッカ近郊、サバールの商業ビル、ラナプラザ(8階建て)が倒壊し、ビル内で操業していた5つの衣料工場の労働者約3000人が生き埋めになりました。警察、消防、軍やボランティアの人たちの救出活動によって約2千300人が救出されましたが、瓦礫の中から次々と遺体が発見され、犠牲者の数は5月12日現在で1125人となっています。
バングラデシュの衣料工場では、火災などの労働災害が繰り返し発生し、そのたびに多数の犠牲者が出ています。その大部分は若い女性です。昨年11月24日にも、ダッカ郊外、アシュリアのタズリーン・ファッション社の工場ビルで火災が発生し、110人の労働者が犠牲になっています。
クリーン・クローズ・キャンペーンは、このような悲劇が繰り返されないように、「衣料ブランドにバングラデシュの工場の防火・安全に関する協定に署名するよう求めるオンライン署名」を呼びかけています。すでに全世界から100万人が署名しています。
http://www.cleanclothes.org/
から署名することができます。
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以下は「労働情報」誌6月1日号掲載予定のレポートの一部です。
昨年、おおさか社会フォーラムに参加するために来日されたナズマ・アクテルさんのコメントも紹介しています。
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・・・ モヒウディン・カーン・アラムギル内務相は、「ビルの倒壊は建築に欠陥があったことが原因である」と述べている。
ラナプラザは商業ビルとして設計・認可されており、銀行や店舗が入居しているが、違法に建て増しされ、しかもファントム・アパレル、ニューウェーブスタイル等の衣料工場が上階に入居し、設計では想定されていない重い機械が設置され、合計で約5000人の労働者が雇用され、交替制で24時間操業していた。
倒壊事故の前日にこのビルの外壁にいくつかの大きな亀裂が発見されたため、警察は検査が完了するまでビルの使用を中止するよう勧告し、銀行と店舗はこの日、休業した。この問題はテレビでも報道され、24日朝、出勤してきた衣料工場の労働者たちは工場に入ることを躊躇した。5階の工場で働いていたアブドル・ラヒミさんによると、「管理者が出てきて、ビルには何も問題はないと言ったので、われわれは中に入った。仕事を始めて1時間ほどした時、突然ビルが崩れ落ちた。意識が戻った時には工場の外に運び出されていた」(「ナショナルポスト」紙4月24日)。
衣料産業の女性労働者を組織しているソミリト・ガーメント・スラミク連合(SGSF)のナズマ・アクテルさんによると、「労働者たちは前日、ビルの外壁に大きな亀裂が見つかったため、家に帰された。ところが翌朝、経営者は労働者たちに、出勤して仕事をするよう命令した。労働者たちは1時間ほど抵抗したが、経営者が工場に入らないと給料を払わないと脅した。そのため労働者は工場に入って仕事を始めた。その1時間後にビルが倒壊した」(英国「ミリタント」紙5月13日号掲載のインタビュー)。
ナズマさんはまた、次のように指摘している。「工場のオーナーの怠慢のために衣料産業が破滅し、何千人もの女性労働者が仕事を失うかもしれない。、昨年11月のタズリーン工場の火災(本誌12年12月15日号を参照)の責任者が処罰されていたら、サバールの悲劇は起こらなかっただろう。ラナプラザの崩壊によって多数の犠牲者が出たのは単なる事故ではない。ビルと工場の所有者の怠慢であり、彼らがこの犠牲に責任を負っている」(「ファイナンシャル・エクスプレス」紙4月26日付)
現在までにラナプラザのオーナーのモハメド・ソヘル・ラナや工場のオーナーをはじめ十数人の責任者が逮捕されている。ラナは事故直後に姿をくらまし、事故現場では懸命の救出作業が続いている中、インドへの逃亡をはかり、4月28日に国境近くで逮捕された。ラナは与党アワミ連盟の青年部のリーダーであるが、野党の国民党ともコネを持っている。
国内および国外からの批判の高まりに対応して、政府は5月9日に、安全基準を満たしていない18の衣料工場の閉鎖を命じた。同12日には衣料労働者の最低賃金の引き上げのための審議会が設立された。また、ILOの使節団との会談にふまえて、労働法の改定(結社の自由や団体交渉権など)、監査官の増員、負傷した労働者の再雇用等を約束した。同13日に政府は、06年の労働法を改定し、衣料産業の労働者が雇用主の承認がなくても労働組合を設立できるようにすると発表した。
各国の労働組合や市民団体は、バングラデシュの衣料工場の安全と労働者の権利の尊重を要求し、政府や経営団体への申し入れ、オンライン署名、負傷者や犠牲者の家族の救援のためのカンパ等の行動を開始している。同時に、バングラデシュの工場から製品を輸入している衣料ブランドや小売チェーンに対する行動も強化している。
ラナプラザで操業していた衣料工場は、英国、デンマーク、フランス、ドイツ、スペイン、アイルランド、カナダ、米国等の衣料ブランドや小売チェーンに製品を納入していた。英国のプリマーク、マタラン、アイルランドのペニーズ(プリマークの子会社)、カナダのジョーフレッシュ等がこれらの工場との取引を確認している。
インダストリオール(製造業の労働組合の国際産別組織)やクリーン・クローズ・キャンペーン(衣料産業の労働者に対する搾取と人権侵害に反対する市民団体)は、多国籍企業にたいしてバングラデシュの衣料工場の防火・安全のための拘束力のある協定に署名するよう求めてきた。これまでにこの協定に署名していたPVH(カルバンクライン、トミーフィルフィガーなどのブランドを保有している)、チボー(ドイツの小売チェーン)のほかに、スウェーデンのH&Mと英国のプリマークがこの協定を受け入れ、工場の安全のための費用を負担することに同意した。
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