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Channel: 薔薇、または陽だまりの猫
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警察庁長官銃撃事件をめぐる名誉毀損訴訟、東京地裁判決(15日)要旨

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 【警視庁の捜査結果公表による社会的評価の低下】

 警視庁は事件について、「オウム真理教の信者グループが、教祖の意思の下に組織的・計画的に敢行した」などと公表した。犯人と名指ししているのは、直接的には「オウム真理教の信者グループ」といった一部信者グループに過ぎず、直接的にはアレフを指しているわけではない。

 しかし、公表内容を読んだ人は、オウム真理教が組織的・計画的に銃撃事件を実行したとの印象を受けるというべきだ。アレフが東京都足立区に宗教施設を設置しようとしたことへの住民の反対運動があったことや、団体規制法に基づく観察処分で「松本死刑囚の絶対的な影響力の下にある」と認定されていることなどからすれば、アレフがかつて無差別大量殺人を組織的に実行したオウム真理教から単に名称を変えたものに過ぎず、同様の危険性を持つ宗教団体であって、両者は実質的に同一の団体だと一般的に認識されていることは明らかだ。アレフの社会的評価が低下したと認められる。

 【原告の損害】

 公表内容は、新聞各紙で報道されるなど極めて広範に伝わった▽警視庁という公的な捜査機関が長年にわたる捜査の結果を踏まえた上での公式見解として、相応の根拠を示して行われた▽アレフが自ら反論しても、公表の影響を払拭(ふっしょく)することは極めて困難――などの事情を考えれば、アレフの社会的評価の低下は決して軽微とは言えない。

 また、警視庁は、銃撃事件がオウム真理教かその信者による犯行だと訴訟上、立証することが困難と理解していたと認められる。検察が容疑者を不起訴としたにもかかわらず、警察がオウム真理教を犯人と断定・公表して、事実上の不利益を及ぼすことは無罪推定の原則に反するばかりでなく、我が国の刑事司法制度の基本原則を根底から揺るがすものと言わざるを得ない。警視庁による公表は重大な違法性を持つ行為だったと認められる。

 後記の通り、謝罪文を交付させることも考えれば、賠償額は100万円が相当だ。

 【謝罪文の要否】

 アレフは、謝罪文の交付と警視庁玄関への謝罪文の掲示を求めている。

 今回の公表内容は、警視庁による公式見解を示すものとして、一般読者に真実と受け止められ、今後も犯人はオウム真理教だとする根拠として引用されるおそれがある▽アレフが有効な反論をすることは極めて困難▽公表が刑事司法制度を根底から揺るがす重大な違法性を持つ――などからすれば、金銭賠償のみによってアレフの社会的評価は回復できない。原状回復の有効性や必要性を考えれば、謝罪文の交付までは認められるべきだ。

 【当時の警視総監の責任】

 アレフは、公表を制止すべき立場にありながら許可した当時の警視総監にも責任があると訴える。

 しかし、公務員が職務について故意や過失で他人に損害を与えた場合、国や公共団体が賠償責任を負い、公務員個人は民事上の損害賠償責任を負わない。この趣旨は名誉毀損についても当てはまる。警視総監は民事上の責任を負わない。


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